2004年11月10日
松井証券株式会社
イー・トレード証券株式会社
カブドットコム証券株式会社
楽天証券株式会社

ネット証券評議会4社(松井証券、イー・トレード証券、カブドットコム証券、楽天証券)は、本日、下記の要望書を東京証券取引所に提出いたしましたので、お知らせいたします。 記 ネット証券評議会4社は、先般の東京証券取引所取引参加者負担金の見直し案を契機に、日本の株式市場の中心である東京証券取引所を、個人投資家にとって、より使い勝手のよい株式市場にする為に今何が必要かについて議論を重ねて参りました。その結果、株式市場の更なる活性化と取引所システムの安定化を両立させるためには、貴社での夜間取引の開始が不可欠であるとの結論に至り、ここに意見を述べさせていただくことといたしました。

【存在感を増した個人投資家】

貴社主催による「夜間取引市場に関するワーキング・グループ」が開催された平成12年度上期には、個人株式委託売買代金に占めるインターネット取引の比率は僅か20%程度に過ぎませんでしたが、直近の平成16年度上期にはこの数値が実に4倍の80%近くにまで達し、今や、インターネット取引を利用する個人投資家が、株式市場のメインプレーヤーとなったと言っても過言ではないと考えております。貴社におかれましても、取引単位の低額化や、タイムリー・ディスクロージャーなど、個人投資家を重視した対策に鋭意取り組まれていることは十分に承知しておりますが、市場における個人投資家、とりわけインターネット取引を利用する個人投資家のプレゼンスの高まりを、貴社の市場振興策に反映させることが極めて重要であることは、ご如才なき事ながら、貴社でも十分にご認識されていると推察いたします。

【株式市場の更なる活性化】

勿論、株式市場の更なる活性化のためには、貴社のみでなく、我々取引参加者の不断の努力も欠かせないことは論を待ちません。所謂金融ビッグバンの精神も、競争により日本の資本市場を活性化していこうということが狙いであったわけですが、その意味でビッグバンとほぼ同時に始まったインターネット株取引も、個人投資家にとって、より低廉なコストで、より自由に、より使い勝手のよい取引手法を、という将に金融ビッグバンの申し子として必然的に出現したと考えております。その結果、より多くの個人投資家が株式市場に参加すれば、一取引参加者の月間売買代金が2兆円、更に3兆円を超過するという、従来では考えられなかったことが現実化すると考えます。こうした状況は、既に本年4月に起きておりますし、極めて近い将来、これを遥かに上回ることも十分予想されます。ところで、先般発表された参加者負担金の見直し案では、新たなボリューム・ディスカウント方式が導入されたとはいえ、その刻みは過去データに基づく数値を前提にされており、残念ながら、今後予想される急激な売買代金増加を想定されていません。申すまでも無く、こうした負担金は間接的ではありますが、個人投資家の負担となります。時代の急激な変化に応じて、臨機応変に対応をしていただくことを強く要望いたします。そうでなければ、取引参加者にとって、個人投資家を株式市場に呼び込むことへのインセンティブが次第に薄れ、それが株式市場の更なる活性化を阻害し、結果的に個人投資家が不利益を被ることになりかねません。具体的には、超大口の取引参加者に対する更に数段階のボリューム・ディスカウントや負担金額の上限設定といったスキームを検討していただきたく要望いたします。

【取引所システムの安定化】

個人投資家の増加は、株式市場を活性化させる一方で、時に株式市場に対して悪影響を及ぼします。特に、インターネット取引を利用する個人投資家の増加は、取引所への注文件数を加速度的に増加させます。我々評議会メンバーの内部データによると、多くの注文が、市場取引終了後から翌朝取引開始までに蓄積され、朝の寄付きに一気に吐き出されます。こうした注文集中は、我々取引参加者のみならず貴社のシステムにも過大な負荷をかけることになります。昨年10月には貴社システムに一時的な不具合が発生しましたが、こうしたことは、当然ながら取引所存亡に関わる事態であり、何としても避けねばなりませんが、その為にもシステム容量アップは緊急の課題です。サーバー等のハード面及び効率的プログラミングといったソフト面での増強も不可欠でありますが、これには多額の投資と何よりも時間が必要です。そこで、我々は、もし注文を分散することができれば、相当程度システム・リスクを低減できるということに注目すべきだと考えます。朝寄付きに集中する注文を分散する方法としては、“夜間取引市場の開設”が最も現実的であると考えております。私どもネット証券評議会は、取引所システムの安定化こそ個人投資家の利益に資するものと考え、改めて夜間取引市場の開設を強く要望いたします。前回議論から4年経ちましたが、その間、市場を取り巻く環境は激変しました。また、今後の変化はこれを更に上回るでしょう。最早、一刻の猶予も許されないというのが、評議会の結論です。

【貴社ビジネスとしての夜間取引市場】

申すまでも無く、この4年の間に貴社は会員組織から株式会社に変身されました。株式会社東京証券取引所として、夜間取引市場は、取引所システムの安定化策にとどまらず、収益の拡大策としても重要であります。我々評議会メンバーは取引参加者としてだけではなく、株主として貴社の利益拡大を望むものでもあります。先にも述べましたとおり、個人株式委託売買代金に占めるインターネット取引の比率は80%に迫る勢いです。総務省がまとめた「平成15年通信利用動向調査」によれば、平成15年末時点で、国内のインターネット利用者は7,730万人にのぼり、人口普及率は60%を超えました。そして、21:00~22:00の時間帯がインターネット利用のピークであることは、専門機関の調査により明らかになってきました。夜間取引市場をビジネスとして捉えた場合、これほど望ましい環境はありません。

【世論は貴社の対応に注目】

一方で、夜間取引に参加するかどうかは、各取引参加者の経営判断に委ねられるでしょう。受益者負担の考え方からすれば、夜間取引参加者に別途負担金を課すという議論に、絶対反対ということは考えておりません。勿論、別途というからには、昼間の取引と夜間の取引を分けて負担金率を出さねばならないのは当然ですから非常に複雑になることは避けられないでしょう。更に、開設当初から参加する取引参加者と、様子を見た上で、途中で参加する取引参加者の負担金率を一律とすることは、通常の商取引では有り得ないことであり、その場合の負担金率格差をどうするかも議論しなければならないでしょうし、話は更に複雑になります。ただ、この議論は本質では無いと考えております。最も大事なのは貴社が主体性を持って、利益を追求することを目的とする株式会社としてのスタンスと、資本市場の中心たる東京証券取引所運営主体として、言わば公器としてのスタンス、即ち資本市場を如何にして活性化させるかといった政策とを、どう調整するかの問題であると考えております。どちらのスタンスからしても、夜間取引開始は必要だと評議会では考えておりますが、決定は申すまでも無く貴社がなされることです。世論は貴社の決定を注視しています。 私どもネット証券評議会は、微力ではございますが、こうした議論に積極的にご協力させていただきたいと考えております。

以上