2014年8月21日
SBIホールディングス株式会社
SBIファーマ株式会社
公立大学法人大阪市立大学

SBIホールディングス株式会社の子会社で5-アミノレブリン酸(ALA※1)を利用した医薬品、健康食品及び化粧品の研究・開発等を行っているSBIファーマ株式会社(所在地:東京都港区、代表:北尾吉孝、以下「SBIファーマ」)と共同研究を進めている公立大学法人大阪市立大学(所在地:大阪府大阪市、学長:西澤良記、以下「大阪市立大学」)は、大阪市立大学大学院医学研究科皮膚病態学の小澤俊幸講師のグループによる「マウスのメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染皮膚潰瘍に対する5-アミノレブリン酸(ALA)の投与と410nm-LEDを用いた光線力学療法」という論文が、米国科学誌“PLOS ONE”に掲載されましたので、以下の通りお知らせいたします。

掲載誌: PLOS ONE
表題: Photodynamic therapy using systemic administration of 5-aminolevulinic acid and 410nm wavelength light emitting diode for methicillin-resistant Staphylococcus aureus - infected ulcers in mice
掲載URL: http://dx.plos.org/10.1371/journal.pone.0105173
要旨: 抗生物質に対する耐性菌の出現は、世界的な問題になっています。これら耐性菌に対する治療法の1つに光線力学療法(※2)があります。ALAは光増感剤であるプロトポルフィリンIXの天然の前駆物質(※3)です。これまで、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)(※4)を用いた試験では、ALAが光線力学作用を示すことが数例報告されていました。しかし、このたび世界で初めて感染動物を用いたALAの全身投与による光線力学療法が、耐性菌に対する治療効果を示しました。
本研究では、ALAと青紫色光源410nm-LEDを用いてMRSAに対する治療効果を評価しました。その結果、動物及び細胞を用いたいずれの試験においても、ALAとLEDを用いた光線力学療法がMRSAに対し非常に有効な治療効果を示すことを発見しました。さらに、ALAを用いた光線力学療法は、潰瘍表面上の創傷を改善し、菌数を劇的に減少させました。一方、抗生物質バンコマイシン(※5)を用いた治療は創傷を改善しませんでした。
我々の発見は、ALAを用いた光線力学療法がMRSAに感染した創傷に対する新たな治療法につながることを示しています。

本研究の結果から、医療で深刻な蔓延をきたしているMRSA感染症に対し、ALAと青紫色光源410nm-LEDを用いた光線力学療法が抗生物質に依存しない新規の治療法であることが確認されました。また、その作用メカニズムは、ALAがMRSA内でプロトポルフィリンⅨに代謝され蓄積し、410nmの青紫色光源によって活性酸素が発生し細胞障害により殺傷したものと示唆されました。そのため、実際には多種類のMRSAの存在が確認されていますが、これら全てのMRSAに対してもALAと青紫色光源410nm-LEDを用いた光力学療法が有効であると考えられ、今後のALA-PDT研究に大きな可能性が広がりました。

(※1)5-アミノレブリン酸(ALA)とは:体内のミトコンドリアで作られるアミノ酸。ヘムやシトクロムと呼ばれるエネルギー生産に関与するタンパク質の原料となる重要な物質ですが、加齢に伴い生産性が低下することが知られています。ALAは、焼酎粕や赤ワイン等の食品にも含まれるほか、植物の葉緑体原料としても知られています。
(※2)光線力学療法とは:ALA を摂取しある波長の光を照射して発生する活性酸素でがんや感染症などの病巣を殺す手法。
(※3)前駆物質とは:化学反応などによってある物質が生成される前の段階にある物質。
(※4)メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)とは:メチシリンなどのペニシリン剤をはじめとして、β-ラクタム剤、アミノ配糖体剤、マクロライド剤などの多くの薬剤に対し多剤耐性を示す黄色ブドウ球菌。外科手術後の患者や免疫不全者、長期抗菌薬投与患者などに日和見感染し、腸炎、敗血症、肺炎などを来し、突然の高熱、血圧低下、腹部膨満、下痢、意識障害、白血球減少、血小板減少、腎機能障害、肝機能障害などの症状を示す。
(※5)バンコマイシンとは:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) を殺菌できる抗生物質として有名であったが、近年、バンコマイシンに耐性を示すMRSAが出現。このため有効な治療法が見つかっていない。

以上