2018年7月10日
SBIホールディングス株式会社

 SBIホールディングス株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:北尾吉孝)は、siRNAの新薬候補物質を数多く保有している子会社のQuark Pharmaceuticals, Inc.(本社:米国カリフォルニア、Chairman & CEO:Daniel Zurr、以下「クォーク社」)が2018年7月9日(現地時間)、開発中のsiRNA化合物「QPI-1002」(スイス・ノバルティスファーマにライセンス契約独占交渉権を付与)について、心臓手術に伴う急性腎不全(AKI)の予防薬のフェーズⅢ臨床試験で患者に対する最初の投与を開始したことを発表しましたので、内容について以下の通りお知らせいたします。

 なお、本資料は7月9日にクォーク社が発表したプレスリリースを日本語に翻訳したもので、参考資料として提供するものです。その内容および解釈については英文プレスリリースが優先されます。英文プレスリリースは下記URLよりご参照ください。
http://quarkpharma.com/?p=12506

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 2018年7月9日、米カリフォルニア州・フレモントのクォーク社は、心臓手術に伴う急性腎不全(AKI)の予防薬であるQPI-1002(p53を標的とするsiRNA)のフェーズⅢ臨床試験(開発番号:QRK309、臨床試験番号:NCT03510897)において、患者に対する最初の投薬を行ったことを発表しました。

 フェーズⅢ試験は、二重盲検、プラセボ対照、多施設共同で実施される試験であり、心臓手術を受けている患者に対するQPI-1002の有効性と安全性を評価します。対象となる患者は無作為に、静脈注射によるQPI-1002の単回投与またはプラセボ投与群に割り付けられます。この研究では、世界中の115ヵ所にわたって、心臓手術後にAKIとなるリスクが高い約1,038人の被験者が登録される予定です。
 QRK309試験のプライマリーエンドポイント(主要評価項目)は、90日目における主要な腎への有害事象(MAKE90)が発生した患者の割合です。MAKE90は90日目までの死亡、90日目までの腎代替療法(RRT)の開始、90日目時点において、血清シスタチンC(eGFRcys)に基づいて推定された糸球体濾過率(eGFR)の25%以上の低下の発生で定義されます。腎機能の指標であるeGFRの従来の分析物質は、血清クレアチニン(SCR)ですが、これもこの試験におけるプライマリーエンドポイントの感度分析において評価されます。
 クォーク社は2017年7月に、AKIの予防を目的としたQPI-1002を使用した大規模な多施設フェーズⅡ臨床試験(開発番号:QRK209、臨床試験番号:NCT02610283)におけるポジティブなデータを報告しました。この試験では、QPI-1002はMAKE 90エンドポイントの29%(p値 = 0.024)の相対的なリスク低下を示しましたが、これは現在のQRK309フェーズⅢ臨床試験のプライマリーエンドポイントと同じ患者集団及び同じMAKE 90エンドポイントの要素からなるものでした。さらにこのフェーズⅡ試験においては、複数のセカンダリーエンドポイントに加えて、高リスク患者での術後5日間におけるAKIの発症率、重症度および発症期間を有意(p値 = 0.0204)に減少させるというプライマリーエンドポイントも達成しました。

 クォーク社のチーフ・メディカル・オフィサーである Elizabeth C. Squiers医師は、 「我々のフェーズⅡ臨床試験におけるデータに基づいて設計されたこの重要で革新的なエンドポイントを使用して、QPI-1002を用いたこのフェーズⅢ臨床試験における患者への投与開始について発表できることを嬉しく思います。これは、フェーズⅡ臨床試験の成功に基づく、AKIを発症する危険性の高い心臓手術を受ける患者のための新たな治療選択肢創出の可能性を示す、当社の重要なマイルストーンとなります。AKIは心臓手術の重篤な合併症であり、未だ大きなアンメットメディカルニーズであるのです」と述べました。

 本試験の参加施設の一つであるノースカロライナ州ダーラムにあるデューク大学メディカルセンターの、集中治療医Madhav Swaminathan医師は「シスタチンCに基づくこの重要なMAKE90エンドポイントを使用した新しい治験薬によるフェーズⅢ臨床試験の進行は、AKIの臨床試験における重要な進歩です」と述べています。また、「シスタチンは、腎機能低下のリスクのある一部の患者に対しては、腎機能を評価するためのよりよい方法である可能性があると報告されている」上に、国際腎臓病ガイドラインであるKDIGO (Kidney Disease: Improving Global Outcome)でも推奨されています。

 同じ分子から成るQPI-1002は、腎移植後臓器機能障害(DGF)に対するフェーズⅢ臨床主試験(開発番号:QRK306、臨床試験番号:NCT02610296)において、2018年1月に594人の患者への投薬を完了しました。AKI試験と同様に、DGF のフェーズⅡ臨床試験(開発番号:QRK006、臨床試験番号:NCT00802347)におけるデータに基づき、クォーク社は新しい革新的なプライマリーエンドポイントを用いたDGFに対するフェーズⅢ臨床試験のデザイン全般について、FDAと合意しました。2018年の第4四半期に最初の解釈報告(FIR)を受領することが期待されます。
詳細については、www.clinicaltrials.govのQRK309、臨床試験番号:NCT03510897を参照してください。 

【急性腎不全(AKI)について】
主要な心臓手術を受けている患者では、手術中の腎臓への局所血流の減少に伴う虚血状態、および血流の回復後のいわゆる再灌流傷害が起こる結果、AKIが術後数時間から数日以内に発症します。心臓手術を受けている患者の60%以上がAKIを発症する中等度から重度のリスクを有し、40%以上がAKIを発症しています。心臓手術後に透析が必要な患者の予後は不良であり、全般的な心臓手術後の死亡率2-8%と比較して60%を超えるという、大きな死亡リスクがあります。心臓手術後の正常な腎機能を有する患者と比較して、透析を必要としないAKIを発症する患者においては短期および長期での死亡リスクは4倍に増加します。AKIは特定の治療法がないアンメットメディカルニーズの1つです。

【QPI-1002について】
QPI-1002は初めてヒト臨床試験に供された全身投与型siRNA医薬品であり、何百人もの患者に対して行われた、適切にコントロールされた、有効性を検討するための複数の臨床試験を経てきました。これは治験用の医薬品であり、プロアポトーシス遺伝子p53の発現を一時的に阻害して、正常細胞を急性組織傷害に起因する細胞死から保護するように設計されています。前臨床試験ではp53を標的としたsiRNAが、臨床を適切に反映した様々な動物モデルにおいて、虚血再灌流傷害から腎臓を保護し得ることが示されています。QPI-1002は腎臓移植後の臓器機能障害の予防薬として、米国および欧州でオーファンドラッグ指定を受けています。2010年8月の契約に基づき、ノバルティスファーマはQPI-1002の開発と販売のための独占的な世界的ライセンス契約の交渉権を保有しています。

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以上