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SBIグループは1999年の創業以来、20年以上にわたり証券・銀行・保険など幅広い金融サービスを手掛ける世界でも類を見ない「インターネット金融生態系」の構築(金融サービス事業)や、ベンチャー企業の投資・育成(アセットマネジメント事業)、新たな医薬品・健康食品等の研究開発・製造(バイオ関連事業)など、「自己進化」を通じて21世紀の中核的産業の創造・育成を実現してきました。これからは、金融機関はもとより、フィンテック、AI、ブロックチェーン、量子コンピューターなどの先進技術を有する企業や技術系ではない異業種企業とWin-Winな関係を構築する“オープン・アライアンス” を積極的に推進することで事業成長を図ります。当社グループによる「自己進化」に加えて、様々な企業との「共創」によってSBIグループにおける持続的な企業価値の向上を実現し、社会的価値の増大も目指します。

時流を捉えることで持続的な成長を実現

経営者に求められる「3つのキ」

世界規模で社会・経済など様々な側面において変化が加速していますが、その中でも企業は永続的に発展し、社会の維持・発展に貢献しなければなりません。そのため、昨今では従前以上に経営者の先見性が求められているように感じます。私はSBIグループの創業以来、顧客のニーズはどのようなもので、どこに需要があるのか、それに応える事業は何かを考え続けてきました。
つまり、経営者には、それを判断する目が求められるのです。これを言い換えれば「先見性」となりますが、私はその条件を「三つのキ」というキーワードで表現しています。それは、中国古典の教えにある「幾」と「期」と「機」のことです。まず「幾」ですが、物事はある日、突然変化するのではなく必ず何らかの兆しがあります。その兆しを捉えられるかどうかが、先を見通す上で非常に重要になります。次に「期」ですが、物事は適切なタイミングを見極めることが肝要です。例えば、新しい事業やサービスなどを始めるにあたっては、当然ながらタイミングが遅すぎてはいけませんが、早すぎても顧客に受け入れてもらえません。最後に「機」は勘所やツボのことです。ビジネスでも「この事業の本質はこれだ」という勘所の見極めが欠かせません。
 当社グループでは、インターネット革命❶と日本版金融ビッグバン❷という2大潮流による時代の変化=「幾」を察知し、インターネット金融の黎明期であった1990年代後半という絶好のタイミング=「期」でオンライン証券事業に参入しました。そして、株式の売買委託手数料を圧倒的に下げることがオンライン証券の要点=「機」であると見極めるなど、的確な手を打つことで当社グループの事業成長を実現してきました。

戦略によって成長軌道に乗る

SBIグループの創業当時は、インターネット時代の到来によりこれまでの競争優位性が変化するタイミングであり、消費者主権の時代に突入しようとしていました。その中で、何を提供すれば高い顧客便益性をもたらせるのかを考えたとき、それはつまり事業構築の基本観としても掲げている「顧客中心主義❸」を徹底するということでした。規制緩和によって株式売買委託手数料が完全自由化されたことを追い風に、価格破壊とも言える手数料の大幅引き下げを実施し、同じ時期に開業したオンライン証券各社の中でも最も安価な手数料を実現したのです。反対意見もありましたが、手数料を安くすれば多くの顧客が集まり、そうなると顧客満足度を高めるために商品の品揃えを充実させたり、システムがダウンしないようにサーバーの数を増やしたりと、ヘーゲルの「量質転化の法則❹」で述べられているように量の増加に合わせてサービスの質が高まり、またサービスの質が高まれば量が増加するという好循環が生まれると考えたのです。
 もう一つ重要なことが、互いに作用し合う企業集団をつくることで、一社単独での事業展開と は異なり、グループの総和が拡大するという複雑系の科学❺の考え方に基づく「企業生態系❻」の形成です。この考えに基づいて証券・銀行・保険などの多岐にわたる金融サービスを手がけるエコシステムである金融生態系の構築を戦略的に行ったことで、相乗効果と相互進化によってグループ各社もグループ全体も収益力を強化することができ、当社グループは持続的な成長を遂げてきました。

インターネット革命:
インターネットの急速な普及に伴い、だれでもインターネット上の情報にアクセスできるようになることで消費者主権が確立し、金融サービスに変化をもたらした。
日本版金融ビッグバン:
1996~2001年度に政府が実施した大規模な金融制度改革の通称。株式売買委託手数料の完全自由化や金融持株会社の設立が認められた。
顧客中心主義:
P.10参照
量質転化の法則:
ドイツの哲学者ヘーゲルが説いた、ある個別の量的変化は質的変化に転化し、新しい質を持った個別へと変わり、そして変化した個別は、新しい質の運動として新たな量的変化のプロセスを歩んでいくというもの。
複雑系の科学:
「複雑系の科学」という考え方には二つの命題があり、一つは「全体は部分の総和以上である」、もう一つが「全体には部分に見られない新しい性質がある」というもの。
企業生態系:
P.10参照

これからの社会変化を捉えた経営戦略

経営における判断基準

これまでSBIグループが成長を続けてきた中で最も重要なことは、時代の流れを察知した経営判断に他なりません。経営の判断を行うためには、「判断の基準」を会得していなければならず、それがなければ迅速かつ的確な結論を出せません。私が「判断の基準」としているのは、「信・義・仁」という3つの倫理的価値観で、「信」は社会の信頼を失わないこと、「義」は社会的正義に照らして正しい行いをすること、「仁」は相手の立場に立って物事を考えることです。常にこの「信・義・仁」に照らすことにより、軸をぶらさず的確に判断することができています。
 現在、世の中には様々な社会課題や潮流がありますが、SBIグループでは課題解決に貢献し得る分野や成長機会のある分野を、私の「判断の基準」に照らし、更なる飛躍を実現するための戦略として掲げています。以下では当社グループにおける全体戦略についてご紹介します。

地方の主たる経済主体との価値共創を通じた、地方創生への積極的な貢献 参照:P.20特集

SBIグループでは、国家戦略である地方創生❼に貢献するべく様々な取り組みを進めています。
例えば、私共グループ各社は、日銀のマイナス金利政策や人口減少等で苦しむ地域金融機関との様々な連携を通じて地域金融機関の収益力強化に寄与してきました。❽
 一方で、地方創生を実現するためにはより広い視座で地方経済を考えなければなりません。
我々は、地方経済は4つの経済主体「地域金融機関」「地域住民」「地域産業」「地方公共団体」で構成されていると捉えており、これらを活性化することではじめて国家的戦略である地方創生を具現化できると考えています。
 そこで、地域金融機関を中心とした今までの施策から更に歩を進め、地方経済全体を見据えた施策として打ち出したのが「地方創生パートナーズ❾」の構想です。地方創生パートナーズは地方創生を推進するための戦略指針の提示や企画立案を行う統括会社で、地方創生の具現化という志を同じくする複数のパートナー企業と共同で設立します。その後、地方創生に資する機能を提供するSBI地方創生サービシーズ❾および地方創生に資する企業への投融資を担うSBI地方創生投融資❾の2社を順次設立する予定です。この3社はいずれも当初は、当社グループが51%超を保有しますが、これは私たちがリーダーシップを持って土台を作り、しっかりとした方向性を持った会社づくりを行うためです。地方創生パートナーズでは、出資企業から1名ずつ取締役を受入れるとともに、一種の公共財として民主的に事業運営を行う方針です。SBI地方創生サービシーズは地域金融機関への共通システムの提供、地域金融機関の収益力強化に向けた資産運用の支援のほか、SBIグループのベンチャー企業を中心とするパートナーと連携し、地域産業・地方経済の活性化支援を行います。SBI地方創生投融資は、地方創生に資する地方のベンチャー企業等への投融資や、国内外の高利回り投融資案件の発掘と地域金融機関への紹介やこうした案件での運用受託等々を行います。それぞれの会社において、都市銀行や地方銀行、生命保険会社や損害保険会社、海外投資家、不動産会社といった様々な業界から新たな出資パートナーを受け入れる予定です。当社グループの創業時からの想いである「公益は私益につながる」を本構想においても実践し、参加各社と地方経済の双方に寄与していくことを目指します。
 他方で、当社グループがこれまで資本業務提携を締結してきた地域金融機関や、これから資本業務提携を行う地域金融機関に対して、一層効率的かつ有効なサポート体制を築くために設立したのが、SBIグループが100%保有する持株会社「SBI地銀ホールディングス❿」です。同社には、SBIホールディングスが資本業務提携を既に締結した4行の株式を移管します。今後合計10行程度まで拡大すると見込まれる地域金融機関との資本業務提携においても同社が中核となり、先ほど説明したSBI地方創生サービシーズやSBI地方創生投融資とも緊密に連携し、地域金融機関の企業価値向上をサポートします。なお、SBIグループが今後、地域金融機関へ出資する際は原則として当該金融機関の同意のもと、①第三者割当増資の引き受け、②既存株主からの取得、あるいは③これら両方の方法で、合意した株式数のみを取得することとしており、出資比率についても当該金融機関の意向に沿う形で判断する方針です。この他にも今後は、小規模事業者と関係性の深い信用金庫・信用組合との業務提携も積極的に推進することで事業規 模を拡大していきます。
 コロナ禍を受け、これまでの大都市集中から地方分散型社会への転換が企図されています。 これは地方創生のあり方を国民が考える大きな契機であり、また、改正国家戦略特区法の成立など国としての地方創生への関心は確実に高まっています。これらの社会的・政治的な後押しも当社グループの地方創生への取り組みに活かし、より積極的に地方創生を推進していきます。

地方創生:
P.63参照
地域金融機関との提携状況:
P.57参照
地方創生パートナーズ、
SBI地方創生サービシーズ、
SBI地方創生投融資:

P.21参照
SBI地銀ホールディングス:
P.22参照

“オープン・アライアンス”の積極的な推進 参照:P.23特集

当社グループはこれまで、「企業生態系」の中でシナジーを追求するとともに、他社と様々な知恵や技術を結集し、革新的な研究開発を目指す“オープン・イノベーション”を推進することで発展してきました。私は、これを更に大きな枠組みで捉えた “オープン・アライアンス”という考え方が大切だと考えています。つまり、様々な業態にわたる多くのグループ外企業と提携し、Win-Winな関係を具現化するということです。オープン・アライアンスによって、顧客からの様々な需要に応える総合的なサービスを提供することができ、それはSBIグループの顧客基盤の拡大にもつながります。これらは一社単独では成し得ないことです。当社グループは今後、Win-Winな関係が構築できる企業であれば、積極的に協業を推進していく方針です。
 2020年4月には、日本を代表するメガバンクの一つである(株)三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)との戦略的資本業務提携を公表しましたが、これもオープン・アライアンスの考えに基づくものです。SMBCグループは、既にマネータップ社⓫に資本参加していただいていることに加え、SBI R3 Japanへの資本参加も検討いただいています。また、米R3社および英TradeIX社が「Corda⓬」を用いて推進するMarco Poloプロジェクトに参加しており、貿易金融分野での分散台帳技術(DLT:Distributed Ledger Technology)プラットフォームの早急な活用・普及に取り組まれています。更に、この度のSMBCグループとの戦略的資本業務提携では、デジタル領域と対面領域を含む各種事業領域における両グループの強みを活かしながら協力関係を構築していくことを掲げており、スマホ証券を通じた若年層等の投資初心者向け金融サービスの提供や、地域金融機関の対面での証券ビジネスの共同提供の検討を行います。これに加え、投資分野においては、SBIグループが設立を進めている新ファンドへの出資を検討いただいており、地方創生分野においても、SBI地方創生サービシーズへの出資が予定されるなど、多岐にわたる事業分野での協業を進めていく計画です。
 また、当社グループがかねてより推進しているネオバンク構想、ネオ証券化の推進についても、こうした考え方を具現化するものです。
 まず、ネオバンク構想についてご説明します。現在、 ITや小売りなどの異業種企業が自らの経 済圏拡大の手段として銀行機能を活用するなど、「預金」「融資」「為替」といった従来銀行のみ が提供していた様々な銀行機能のアンバンドリング化(分解)が進んでいます。そのため住信SBIネット銀行では、こうした多様な銀行機能を外部の様々なパートナー企業にプラットフォームとして提供し、パートナー企業の顧客がスムーズで快適に金融サービスを利用できる仕組みを、パートナー企業と協同で構築していくネオバンク構想を推進しており、2018年10月にはネオバンク事業部を創設しています。
 住信SBIネット銀行では2016年に日本で初めてAPI⓭連携を開始して以降、銀行機能を外部企業のサービス利用者に提供しており、2017年9月には日本航空(株)との提携によって共同事業会社JALペイメント・ポート(株)⓮を設立しています。更に2019年には、リクルートグループや旭化成ホームズグループといった大手事業者との銀行代理業委託契約を締結しています。また、光通信グループとは中小企業の顧客基盤に対する新規事業創出について提携を開始しているほか、Zホールディングス(株)傘下の(株)ジャパンネット銀行への住宅ローン商品「フラット35⓯」の提供を準備するなど、ネオバンク化によって新たなサービスを創出していく段階に入りました。
 なお、住信SBIネット銀行では、野村證券(株)を主幹事の1社に決定するなど、新規株式公開に向けて準備中です。
 また、SBIグループでは次世代の証券事業のあり方を見据え、オンライン取引での国内株式の委託手数料や現在投資家が負担している一部費用の無料化を図る「ネオ証券化」の推進にも取り組んでいます。ネオ証券化の実現に向けては、既に利益インパクトの小さい施策から開始しています。今後は、SBIネオモバイル証券での株取引等の手数料無料化を実現したうえで、オンラインでの国内株式の現物取引・信用取引の手数料無料化と段階的に進める計画です。この最終段階の実現に向け、SBI証券では営業収益に占めるオンライン取引による国内株式の委託手数料の構成比を、2020年3月期時点での17%から5%以下にすることを目指しています。
 このオンライン取引による国内株式の委託手数料の割合を低下させるためには、現在でも他社を圧倒的に凌駕しているリテールビジネスのポジショニングを更に向上させることに加え、株式委託手数料に依存しない事業基盤の確立が必要です。具体的には、プライマリーやセカンダリーの株式・債券の引受業務やM&A関連事業に注力しつつ、金融法人部を通じて顧客金融機関へのブローカレッジビジネスを拡大させるとともに、事業法人部を更に強化するなどホールセールビジネスを一層強化することで、収益源の多様化をこれまで以上に図っていきます。
 収益源の多様化に向け、FX収益をはじめとするトレーディング収益も順調に伸長しており、今後もSBI証券の収益力向上に貢献するものと考えています。トレーディング収益は主にFX関連事業によって占められますが、国内外でSBIグループのOTCマーケットに取引参加する企業が増加していることから、FX関連事業の更なる拡大が見込まれます。また、トレーディング収益の中には暗号資産取引に係る収益も含まれており、2017年9月に暗号資産交換業の登録を受けたSBI VCトレードは、2019年7月から取引所サービスを開始したほか、2020年5月の改正資金決済法等の施行を受けてSBI FXトレードと協業し、事業拡大に取り組んでおり、今後は暗号資産取引においても収益貢献が拡大していくものと考えています。
 加えて、ネオ証券化の実現に向け、オンライン取引による国内株式の委託手数料への依存度低減につながる事業領域について、国内外でのM&Aも視野に入れています。M&AのターゲットエリアはFX事業者や暗号資産事業者、M&A仲介事業者、資産運用会社などと定めています。例えば、レオス・キャピタルワークス⓰を2020年6月に連結子会社化したことにより、新たな顧客基盤の開拓とともに、運用資産残高の拡大に伴う信託報酬の増加を図ります。

マネータップ社:
Money Tap事業を早期に展開す るために、2019年3月に設立。地方 銀行等35行が資本参画(2020年4 月末現在)。
Corda:
米R3社が開発したDLTを活用した企業間取引のプラットフォーム。
Application Programming Interface(API):
ソフトウェアの機能や管理するデータなどを、外部の他のプログラムから呼び出して利用するための仕組み。2017年5月に「銀行法等の一部を改正する法律」が成立したことで、銀行が外部事業者との安全なデータ連携のための「オープンAPI」が努力義務とされ、金融機関以外の事業者との連携による革新的な金融サービスが創出されている。
JALペイメント・ポート(株):
住信SBIネット銀行と日本航空(株)(JAL)、ならびにSBIホールディングスとJALの共同持株会社であるJAL SBIフィンテック(株)の3社による共同事業会社。
フラット35:
(独)住宅金融支援機構が全国300以上の金融機関と提携して扱う、返済期間が最長35年の長期固定金利型住宅ローン商品の名称。
レオス・キャピタルワークス:
個人投資家から高い評価を受けている「ひふみ投信」等の投資信託を運用する資産運用会社。

加速するデジタルトランスフォーメーション(DX)⓱の流れへの組織的対応 参照:P.27特集

SBIグループはこれまで、インターネットの急速な普及とともに、ITを活用した金融生態系という独自のビジネスモデルを構築し、飛躍的成長を実現してきました。そうした中、現在では金融業界だけでなく様々な業界において、AIやブロックチェーン・DLTを中心に、それらと親和性の高いビッグデータ、IoT、ロボティクス等の先進技術の導入が進んでいます。SBIグループでは、今後も引き続きこれらの先進技術における有望な企業への投資や提携を積極的に進めるとともに、グループ内の各金融サービス事業会社で、これらの先進技術を活用した新サービス・商品の開発や、新たな金融ビジネスの創造に向けた取り組みを強化していきます。
 特に、アナログからデジタルへの移行というDXが加速している中では、ブロックチェーン・DLT等の活用を通じ、グループのデジタルアセット分野の事業展開をより一層図っていきます。具体的には、DX時代に合致した組織的な対応を図るべく、SBIデジタルアセットホールディングスを中心とするグローバル組織体制の構築を進めています。そして、DLTの更なる活用に向け、SBIグループは電子的手段を用いた資金調達手法であるセキュリティ・トークン・オファリング(STO)⓲に着目しています。2019年10月には、業界の健全な発展を図り自主規制の策定等を行う(一社)日本STO協会が設立され、2020年7月時点で証券会社10社が正会員として参画しているほか、各方面から23社がSTO発行を支援する賛助会員として参画しています。2019年5月の法改正に伴って、トークンを用いた資金調達であるSTOは金融商品取引法の規制対象となり、2020年5月からこの法改正が施行されています。今後は当協会に参画する各社の様々な知見を結集し、国内における法令遵守・投資者保護を徹底させたSTOのビジネス機会を模索します。
 また、私は、国際送金や貿易金融を含めた様々な金融事業において、世界で最もグローバルスタンダードに近いDLTを有するのは、米Ripple Labs社と「Corda」を提供する米R3社だと考えており、両社との協業を推進してきました。SBIグループはRipple Labs社、R3社両社の外部筆頭株主であるとともに、Ripple Labs社とは2016年に合弁会社SBI Ripple Asiaを設立し、またR3社とも2019年1月に合弁会社SBI R3 Japanを設立するなど提携関係を強化しています。
 安価で安全な送金・決済サービスの提供については、マネータップ社を通じ、Ripple Labs社と共同開発したDLTを用いたスマートフォン向け送金アプリ「Money Tap⓳」の提供を2018年10月に開始しており、DLTを用いた次世代金融インフラの迅速な展開を進めています。
現在では、プリペイドチャージ事業者との接続が開始されており、既存インフラを介するこれまでに比し、銀行・プリペイドチャージ事業者双方にとって安価で容易な接続をサポートするなど本格的なサービスを開始しています。

デジタルトランス フォーメーション(DX):
2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念。企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
セキュリティ・トークン・ オファリング(STO)
P.63参照
Money Tap:
米Ripple社のDLTである「RippleNet」を基盤技術とし、銀行口座から銀行口座への個人間送金を24時間365日リアルタイムかつ安全・快適に行うことが可能なスマートフォン向け送金アプリ。

社会に求められる企業であり続ける

ポスト・コロナ時代の展望

現下、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大によって、非常に大規模な被害や生活の変化が生まれており、私はこのコロナ禍を受けて社会は大きく変革していくものと思っています。SBIグループの手がける事業に関連する社会変革として考えられることは、他人との接触や衛生的リスクの低減に向けてキャッシュレス化が進むことや、安全性・透明性に強みを持つブロックチェーンを活用したサービスが進むことなどが挙げられます。この他にも、リモートワーク環境の整備やDXに伴うセキュリティ対策ニーズが増加することも考えられ、いずれもSBIグループが注力してきた事業やサービスにとっては追い風となる状況です。コロナ禍は業績のリスク要因ではあるものの、このような変革期においては、新しい技術や仕組みが普及する可能性が高く、革新的な事業やサービスの提供に挑んできた我々にとっては事業成長の機会であると捉えています。
 加えて、感染症への対策として関心が高まるバイオテクノロジーやヘルスケア領域のベンチャー企業への投資を積極化し、医療や治療、健康管理といった領域の事業創出を支援していきます。また、SBIグループにおいては、RPA⓴などITを活用して社内体制の再整備や業務合理化を推進しており、長い目で見たときに結果として良い転換期となるように図っていきます。

人には人徳、企業には社徳
最後に、私の経営哲学について少しお話しします。私は大学を卒業して、ビジネスの世界に入ってからは常に「企業はどうあるべきか」ということを考え続けてきました。その際には、幼少の頃より親しんできた中国古典が大いに参考になりました。そしていつしか、人に徳があるように企業にも「社徳」があると考えるに至りました。高い「社徳」があれば、社会から尊敬され、必ず事業もうまくいきます。こうした社会と調和した企業経営を目指すためには、社会性の認識、社会的信用の獲得によって「社徳」を高めることが肝要です。世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大による社会的・経済的な影響は甚大なものと思いますが、このような状況だからこそSBIグループにできることがあります。SBIグループはグループ全体戦略の推進のみならず、様々な形で本業を通して社会課題の解決に努めており、今後も社会の維持・発展に貢献してまいります。
 私共は経営理念にも謳っている通り、金融業に携わっているからこそ「正しい倫理的価値観を持つ」ことを何よりも大事にし、永続的に、世のため、人のためとなり、社会に必要とされる企業グループとなることを目指していきます。

Robotic Process Automation(RPA):
ロボットによる業務自動化の取り組みを表し、AIやAIが反復によって学ぶ「機械学習」といった技術を用いて、主にバックオフィスにおけるホワイトカラー業務の代行を担う。

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