2010年3月3日
SBIホールディングス株式会社

 当社グループの運営ファンドの出資先である米国の開発段階医薬品会社、クォーク・ファーマシューティカルズ社(以下、「クォーク社」)は2010年3月1日(現地時間)、同社が知的所有権を独占するsiRNA化合物『QPI-1007』について、第1相臨床試験を開始したことを発表しましたので、内容について下記のとおりお知らせいたします。

 

 2010年3月1日、カリフォルニア州・フレモントのクォーク社は、siRNA化合物に関する7件目の臨床試験を開始したことを発表しました。今回の臨床試験で扱われる医薬品候補は、クォーク社が独自の知的財産権に基づいて、非動脈性前部虚血性視神経症(NAION)の患者向けに開発したsiRNA化合物『QPI-1007』です。複数回の前臨床試験を経て『QPI-1007』には、眼球神経保護の効果があることが判明しており、網膜神経節細胞が損傷を受けた際に起こる細胞死の進行を抑制する作用があることも認められています。

 今回の臨床試験には、用量漸増試験(投与量を徐々に増やして効果を測定する試験)、安全性評価試験、忍容性試験(副作用に関する耐性を測定する試験)、薬物動態試験が含まれています。また、オープン試験(医師・被験者等の関与者全てが実施される試験治療の割付けを把握している形式で実施する試験)を採用しており、参加する被験者全員に実際の医薬品候補が投与されます。今回の臨床試験によって、『QPI-1007』を眼球に注射した場合の安全性を検証し、何らかの副作用反応がないかどうか、どれ程の期間にわたって薬効が持続し、成分が体外へ排出されるのか、といった薬物動態についても測定することとなります。更に、NAION患者の体内でどのような生体反応が進むのかということも測定対象の項目に含まれています。尚、今回の臨床試験で被験者は大きく2階層の患者グループに分類されており、米国とイスラエルの2ヶ所で実施されます。第1階層は法律によって定義された視力基準を下回る弱視の患者で、第2 階層は最近になってNAIONに罹患した患者で構成されています。

 クォーク社の最高医療責任者であるシャイ・エーリッヒ博士は「『QPI-1007』について、前臨床試験で得られたデータを前提に今回の臨床試験を始められたことを幸いに思います。『QPI-1007』は、クォーク社が知的財産権を独占的に確保しており、この医薬品候補に関する臨床試験を開始したことは、siRNA製薬分野における我が社の更なる前進のための大きな一歩であると考えています。これまで我が社が自社で発見したsiRNA化合物の研究開発を臨床試験まで推し進めてきたことは、今後も医療分野で革新的な医薬品候補を発見する可能性が大いにあることを示唆しています。」とのコメントを発表しました。

 また、クォーク社のダニエル・ズール代表取締役兼最高経営責任者は「今回、第1相臨床試験を開始したことで、合計5件のsiRNA化合物を用いた臨床試験が実施されていることになりますが、これはRNA(リボ核酸)干渉の技術を利用する創薬産業分野ではこれまでにない実績を打ち立てたと言えます。また、我が社が保有している臨床段階のsiRNA化合物のポートフォリオは、業界最大の規模を誇っていますが、今回はそのことよりも『QPI-1007』が我が社独自の知的財産権に基づいて開発されており、当分野における主導的な地位を確立することに繋がるという点に注目して頂きたいと思います。」とのコメントを発表しました。

『QPI-1007』について
 『QPI-1007』は、クォーク社が独自の知的財産権に基づいてバイオスプリング社と共同で開発したsiRNA医薬品候補です。クォーク社は『QPI-1007』の知的財産権を独占していることから、このsiRNAの構造について他社の知的財産権の制限を受けることなく、自由に研究開発を推進することが出来ます。これまでに実施された前臨床試験で『QPI-1007』には、視神経挫滅および軸索切断により生じた網膜神経節細胞死の2つのモデルで着実な神経保護効果があることが確認されています。また、ラットを用いた眼圧上昇に関する研究実験では、眼圧が上昇してから2 週間後の時点で『QPI-1007』が投与されましたが、この場合も同様に視覚神経への保護効果があることが認められました。

非動脈性前部虚血性視神経症(NAION)について
 非動脈性前部虚血性視神経症(NAION)は、視覚神経部位に発症する急性疾患の一種です。血栓などが原因となって後毛様体動脈部に充分な血流が行き渡らず、視神経乳頭部位に虚血性障害が現れることで発症に到ると言われています。NAIONは突然、痛みも伴わずに発症し、視神経円板部が青白く腫れ上がり、最終的には失明してしまう場合も多くあります。また、失明に至らない場合でも殆どの患者には視覚障害が起こります。これまでのところ、NAIONには有効な治療法が確立されていません。

以上