皆様明けましておめでとう御座います。目下厳しい事業環境下ではありますが、お正月ぐらいは御家族団欒で楽しい一時を過ごされたことと思います。
さて、吉例に従いまして、まず今年の干支から年相を占いましょう。
今年の干支は己丑(つちのとうし・きちゅう)であります。
己は十干の六番目、音読みは正しくは「き」でありまして、慣用的に「こ」と読まれています。己の意義でありますが、古代文字は三つの横線と二つの縦線からなる合字であり、元来、糸のかがまりの象形です。ですから己は糸筋を整え、糸のもつれを伸ばして治めるという意味を持っています。
さらに己は「己は紀なり」と中国古典にあるように糸偏をつけた紀に通じ、紀と同じく「己を正す」ことを本義としています。即ち己を正しくして、物事を整理して、筋道を正し、紀律を正すといった意があります。
また、己は起にも通じ、中国古典によれば「抑屈より起つ」とあり、屈曲したものが伸びる、起ちあがる、奮い起つ、奮起という意味を持っています。
次に十二支の二番目の丑(うし・ちゅう)の字の意義でありますが、説文字から言うと、母のお腹の中にいた胎児が体外へ出て、右手を伸ばした象形文字です。今まで曲がっていた手を生まれて初めて伸ばし、指先に力を入れて強く物を取るというところから「始める」、「掴む」、「握る」という意味を持っています。
また『漢書』律暦志によると丑は紐の意とされています。この糸偏の紐は「紐は束ぬるなり」、「紐は結なり」と言われ、束ねる、統率する、結ぶといった意味があります。個人であれ組織であれ、生命体、組織体の様々な要素を結びあわせ、結合させ、結束させる意です。
以上、十干と十二支の解説を組み合わせると、今年の年相は次のようになります。
昨年は世界経済体制や社会構造において急激かつ未曾有の大変化が起き、大変な混乱が世界中で生じました。今年はこうした混乱を糸のもつれをほどくがごとく整理し、筋道を通し、物事の乱れを治めていく年であります。その為には、新しい紀律を生み出し、新時代に相応しいビジョンを構築し、それを着実に具現化していかねばならない年ということになります。
参考の為に、120年前の己丑の年すなわち1889年には、大日本帝国憲法が発布されました。60年前の1949年には、GHQの経済顧問だったジョセフ・ドッジが立案した経済安定化策が引き起こしたドッジデフレで株価が大暴落しました。また、この時1ドル=360円の単一固定為替レートが施行されました。東京証券取引所の再開もこの年です。この年の10月1日は中華人民共和国が成立した日であります。
余談ですが、過去丑年には戦後経済史に残る出来事が多かったように思います。
例えば、1985年はプラザ合意の年。それまで1ドル=240円でしたが合意直後には200円となり、以降円高基調が続きました。
1997年には消費税5%がスタート。山一証券や北海道拓殖銀行が破綻したのもこの丑年でした。
さて、こうした年相を踏まえ、我々SBIグループの行動指針ですが、次の3点です。
第一に、己を正し、身近な生活の中で紀律を正し、ルールやマナーを見直す。
第二に、世の中がどうなろうと、我々グループ全役職員間に揺るぎない絆を深め、結束力を強化する。さらに進めて、グループ各社間の結束を強め、シナジーを徹底追求する。
第三に、各社・各事業部で全ての事業を見直し、問題点を洗い出し、それらの改善策を打ち出す。また新たな自社の強みを探し出す。
最後に今年の年相から離れて一言付け加えておきたいことがあります。それは日本の金融機関とりわけ我々のような投資業を営むものにとって、現在の好機は戦後初めてかつ、今後もなかなか訪れないかもしれないものだということです。欧米では巨大な金融バブルが破裂し経済は極めて甚大な影響を長期にわたって受けそうであります。しかし日本はその実体経済面でのネガティブな影響を受けてはいるが、欧米と比較すれば金融財政政策と株価対策で十分対応可能なものと言えましょう。世界的な株安と円の独歩高のメリットを最大限享受しつつ、欧米金融機関からの競争もない状況下で思い切り積極的な投資戦略を打ち出していくべきだと考えます。
では、今年もグループ総勢一丸となって頑張りましょう。
代表取締役 執行役員CEO 北尾 吉孝