2009年6月18日
SBIホールディングス株式会社

 当社グループの運営ファンドの出資先である米国の開発段階医薬品会社、クォーク・ファーマシューティカルズ社(以下、「クォーク社」)が、事業進捗についてプレスリリースを発表しておりますので、内容について下記のとおりお知らせいたします。

 

1. 「クォーク社最高科学責任者のエレナ・ファインスタイン医学博士による米国眼科視覚研究学会(ARVO)でファイザー社と共同開発中のsiRNA化合物『PF-04523655(REDD14NP)』に関する研究発表」(2009 年5 月11 日(現地時間)発表)についてのプレスリリースの概要

 カリフォルニア州・フレモントのクォーク社は、同社最高科学責任者であるエレナ・ファインスタイン医学博士が眼科視覚研究学会(於フロリダ州フォート・ローダデール、2009 年5月3 日~7 日)で「siRNA化合物『PF-04523655(REDD14NP)』の網膜細胞への浸透による遺伝子RTP801の発現抑制並びに自然免疫系分子TLR3の活性化回避」との標題で研究発表を行ったと発表しました。本件『PF-04523655(REDD14NP)』は、糖尿病性黄斑浮腫(DME)と加齢黄斑変性症(AMD)の治療に向けてクォーク社とファイザー社が共同開発中のsiRNA化合物です。(これらの治療には視覚低下に繋がる『血管新生』を抑制することと、副作用が出ないこと(他の遺伝子に影響を与えないこと)が重要となります。)

 今回の具体的な研究目的は、化学合成によって19 の塩基対を備えたsiRNA化合物である『PF-04523655(REDD14NP)』が網膜細胞へ浸透する場合、標的の遺伝子RTP801の発現を抑制すると同時に自然免疫系分子TLR3の活性化を回避出来るかを確認することにあります。

 尚、今回の研究は、ケンタッキー医科大学・眼科視覚科学部のジャヤクリシュナ・アンバティ博士との協働で行われました。(アンバティ博士は同大学・眼科視覚科学部の副学部長であり、クォーク社の医療諮問委員会メンバーも兼任しています。)アンバティ博士の研究室では、非合成の21mer 塩基鎖siRNA分子を用いた場合には、遺伝子RTP801の発現を抑制させることによるよりも、自然免疫系分子TLR3が活性化してしまうことによって血管新生が抑制されることが、既にわかっています。今回発表を行ったsiRNA化合物『PF-04523655(REDD14NP)』を用いた試験では、生体内・試験管内のどちらにおいても『PF-04523655(REDD14NP)』が網膜細胞に浸透し、かつ、自然免疫系分子TLR3を活性化させることなく遺伝子RTP801の発現を抑制することにより薬剤効果が導かれたことが確認されています。(すなわち今回の研究で『PF-04523655(REDD14NP)』に望ましい薬剤効果があることが示されたことになります。)

 アンバティ博士は「これまで自分の研究室で行ってきた試験で、多くのsiRNAが意図する塩基配列や標的遺伝子の種類の如何にかかわらず血管新生を抑制し、標的以外の遺伝子の発現も抑制してしまう『オフターゲット効果』を引き起こす可能性が示されてきました。こうした中で、クォーク社とファイザー社が共同開発した『PF-04523655(REDD14NP)』が他のsiRNA化合物にはない薬剤効果を示すことに成功したことに満足しています。」と述べました。

 クォーク社のダニエル・ズール最高経営責任者は今回の発表について「米国眼科視覚研究学会(ARVO)で発表された研究結果は、siRNA製剤開発分野におけるクォーク社のリーダーとしての地位を裏付けるものです。また我が社が高度な技術を要する非常に特殊なsiRNA製剤の開発と臨床段階から商用化を進める能力を有していることも意味しています。我が社はファイザー社のような大手製薬会社と共同で糖尿病性黄斑浮腫(DME)、加齢黄斑変性症(AMD)、その他の視覚分野の疾病治療に向けたsiRNA化合物を開発していることで、我が社の技術力の信頼性を高めています。」と述べました。

 

2. 「クォーク社ディレクターのブルース・A・モリトリス医学博士によるRNA干渉に関するサミットで医薬品候補の『QPI-1002』に関する研究発表」(2009 年6 月9 日(現地時間)発表)についてのプレスリリースの概要

 カリフォルニア州・フレモントのクォーク社の腎臓部門のディレクターであり、インディアナ大学薬学部の教授でもあるブルース・A・モリトリス医学博士は、カリフォルニア州・サンフランシスコで2009 年6 月8 日~10 日に開催されるRNA干渉に関するサミットで、疾患モデル動物を用いた実験によって、医薬品候補の『QPI-1002』の急性腎障害(AKI)と慢性腎臓病(CKD)に対する有効性を証明するデータに関する研究発表を行うと公表しました。クォーク社が開発した医薬品候補の『QPI-1002』は、人間に対する投与治療の認可を取得した最初のsiRNA化合物です。『QPI-1002』は既に、2件の急性腎障害(AKI)に関するフェーズ1試験や、1件の臓器移植後の臓器機能障害(DGF)に関するフェーズ1・フェーズ2試験を実施しています。この『QPI-1002』は、ストレス反応によるアポトーシス(細胞の自然死)の指令を伝達する経路の中で中心的な役割を担う『p53遺伝子』を標的としています。

 モリトリス教授が実験対象のラットの腎臓について、生体顕微鏡で蛍光塗布したsiRNA化合物の投与経路を確認したところ、虚血性腎損傷若しくは腎毒性腎損傷を起こすときに悪影響を受ける代表的な細胞である近位尿細管細胞(PTC)に対して、siRNA化合物が迅速にかつ圧倒的に広まったことが示されました。急性損傷となったラットの腎臓をモデルにした『QPI-1002』の投与量別の時間経過試験では、血清クレアチニン濃度の低下や、近位尿細管細胞(PTC)の細胞死を含む腎臓の深刻な形態的損傷の改善など著しい効果が見られました。再発性のある虚血性腎症に対する月1回の『QPI-1002』の反復投与が腎障害を軽減させ、慢性腎臓病(CKD)の進展を抑制できるというデータが示されました。

 クォーク社のダニエル・ズール最高経営責任者は今回の発表について「当社の開発した『QPI-1002』は、初めて人間に全身投与されるsiRNAとして心血管の大手術後の急性腎障害(AKI)や腎臓移植後の臓器機能障害(DGF)に対する臨床試験がすでに実施されていますが、今回、『QPI-1002』に新たな疾患に対する適用拡大の可能性が見出されたことはすばらしいことです。慢性腎臓病(CKD)は、腎不全や心血管疾患(CVD)などの合併症を引き起こす非常に深刻な疾患です。米国では2,600 万人の成人が、この慢性腎臓病(CKD)に苦しんでおり、更に何百万もの人々が潜在的な発症リスクを抱えています。我々は今後もこれらの臨床試験の継続に尽力する所存です。」とのコメントを発表しました。

 モリトリス医学博士は「現在の標準的な慢性腎臓病(CKD)の治療方法は、疾患を引き起こす状態を治療することによって腎臓の損傷進行を遅らせることと患者の食事と運動の改善です。今回、『QPI-1002』が延命のために透析や腎臓移植を必要とする腎機能喪失や末期腎不全に至ることが避けられない慢性腎臓病(CKD)の進行を急性腎障害(AKI)が誘発することを最小化する新たな治療手段と成り得ることが示されたことに感激しています。今回、疾患の原因いかんにかかわらず慢性腎臓病(CKD)の状態を直接標的とする治療法が見出せたことに非常に満足しています。」と述べました。

◆『QPI-1002』について
『QPI-1002』は、クォーク社の独自特許に基づいて化学合成されたsiRNA化合物です。クォーク社はこの化合物について、ストレス反応の伝達において主要な役割を担う『p53遺伝子』を標的に、一時的に又は可逆的に抑制するという特許発明を保有しています。また『QPI-1002』は、医薬品候補としてクォーク社の特許によって保護されています。細胞の損傷時に『p53遺伝子』を一時的に抑制することで、脆弱な細胞が大量に自発的に細胞死することを防ぎ、自然の修復メカニズムによって細胞組織の統合と機能を温存することが可能となります。急性腎障害(AKI)の場合、『p53遺伝子』が近位尿細管細胞(PTC)の細胞死を誘発するため、腎不全へと至ります。また、急性腎障害(AKI)に関して、『p53遺伝子』の一時的阻害に用いられたRNA干渉技術は、『p53遺伝子』を活性化し結果として死滅する傾向がある標的腎細胞に大部分蓄積するというsiRNAの特性が活かされています。クォーク社はシカゴのイリノイ大学と共同で1999 年9 月10日のサイエンス誌に、siRNAを用いた治療概念に関する初めての論文を発表しました。

 

以上