2015年10月22日
SBIホールディングス株式会社
SBIファーマ株式会社

SBIホールディングス株式会社の子会社で 5-アミノレブリン酸(ALA)(注1)を利用した医薬品、健康食品及び化粧品の研究・開発等を行っているSBIファーマ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役執行役員CEO:北尾 吉孝、以下「SBIファーマ」)は、国立大学法人東京大学(所在地:東京都文京区、総長:五神 真、以下「東大」)との共同研究により、ALAとクエン酸第一鉄ナトリウム(SFC)(注2)の併用投与により、マラリア原虫に感染したマウスを治療し、また、予防効果を発揮することを10月21日発刊のAntimicrobial Agents and Chemotherapyに発表しました。

マラリアは年間罹患者数と死亡者数の多さから世界最大の感染症ですが、旧来の治療薬は副作用が強く、また、近年ではこれらの薬剤に耐性を獲得した原虫が多く現れてきました。より安全なマラリア治療薬も開発されて普及しつつありますが、これに対しても既に耐性を持つマラリア原虫が広まっており、世界では新たなマラリア治療法の開発が緊急的に求められています。
これまでに東大大学院医学系研究科の北潔教授らとSBIファーマは、試験管内において、ALAとSFCの併用がヒトへの感染で最も病原性の強い熱帯熱マラリア原虫の生育阻害を誘導することを明らかにしてきました。この度、ALAとSFCの併用が生体内におけるマラリア原虫の動態に与える影響について新たな知見を得ましたので、発表いたしました。

強毒性のネズミマラリア原虫を致死的条件で感染させたマウスを用い、抗マラリア薬としての可能性を評価したところ、ALAとSFCの併用投与を受けたマウスの60%に治療的効果が認められました。さらに、感染から治癒したマウスは、治癒後230日を超えても同原虫の再感染に抵抗を示し、当該マラリア原虫に対する長期の免疫を獲得していることが判明しました。治癒後のマウスの血清中には当該原虫に特異的な抗体の上昇が観察されており、抵抗性に寄与すると考えられます。

ALA、SFCともにすでに食品や医薬品として利用されている化合物であり、ヒトでの安全性が確保されていることから、既存の抗マラリア薬と比べて副作用が少なく、有効性に優れた画期的な抗マラリア薬となる可能性が高く、今後、臨床応用に向けた開発が期待されます。

【発表雑誌】
雑誌名 Antimicrobial Agents and Chemotherapy
論文タイトル In vivo curative and protective potential of orally
administrated 5-aminolevulinic acid plus ferrous ion against malaria
著者 Shigeo Suzuki, Kenji Hikosaka, Emmanuel O. Balogun, Keisuke Komatsuya, Mamoru Niikura, Fumie Kobayashi, Kiwamu Takahashi, Tohru Tanaka, Motowo Nakajima, Kiyoshi Kita
DOI番号 10.1128/AAC.01910-15.
アブストラクトURL http://aac.asm.org/content/59/11/6960.abstract
(注1)5-アミノレブリン酸(ALA)
体内のミトコンドリアで作られるアミノ酸。ヘムやシトクロムと呼ばれるエネルギー生産に関与する機能分子の原料となる重要な物質ですが、加齢に伴い生産性が低下することが知られています。ALAは、焼酎粕や赤ワイン、かいわれ大根等の食品にも含まれており、健康食品の原料としても利用されています。また、がん細胞において代謝産物のプロトポルフィリンⅨが特異的に蓄積する性質を利用し、脳腫瘍の術中診断薬としても承認されています。
(注2)クエン酸第一鉄ナトリウム(SFC)
貧血の治療や予防に有効な化合物で、古くから広く医薬品や健康食品に利用されています。

以上