2017年7月28日
SBIバイオテック株式会社

SBIホールディングス株式会社(本社:東京都港区、代表取締役執行役員社長:北尾吉孝)の子会社で、癌、自己免疫疾患に対する創薬研究・開発等を手掛けるSBIバイオテック株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:入江健、以下「SBIバイオテック」)は、子会社のQuark Pharmaceuticals, Inc.(本社:米国カリフォルニア、Chairman & CEO:Daniel Zurr、以下「クォーク社」)が2017年7月27日(現地時間)、開発中のsiRNA化合物「QPI-1002」(スイス・ノバルティスファーマにライセンス契約独占交渉権を付与)について主要な心臓血管手術に伴う急性腎不全(AKI)予防薬の有効性と安全性を評価するフェーズII臨床試験結果を発表しておりますので、内容について下記の通りお知らせいたします。

なお、結果のサマリーは以下の通りです。
・ プライマリー及び複数のセカンダリーエンドポイントが達成されました。
・ 心臓手術後のAKI発症率が統計学的に有意に減少しました。
・ AKIの予防のための治験薬について、最初の多施設共同フェーズII試験のプライマリーエンドポイントが達成されました。
・ QPI-1002は良好な忍容性を示し、安全上の問題は見出されませんでした。

本資料は7月27日にクォーク社が発表したプレスリリースを日本語に翻訳したもので、参考資料として提供するものです。その内容および解釈については英文プレスリリースが優先されます。英文プレスリリースをご参照ください。

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2017年7月27日、米カリフォルニア州・フレモントのクォーク社は、心臓血管手術に伴う急性腎不全(AKI)の予防薬であるQPI-1002のフェーズⅡ臨床試験(開発番号:QRK-209、臨床試験番号:NCT02610283)が成功裏に終了したと発表しました。QPI-1002はp53発現を一時的に減少させる化学的に修飾されたsiRNAです。そして、この試験は無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設共同で行われました。

この試験には、45歳以上の341人の、心臓手術を受けAKIリスクのある被験者が組み込まれており、被験者は、「QPI-1002」またはプラセボに対して1:1の割合で無作為に割り付けられました。 この試験のプライマリーエンドポイント(主要評価項目)は5日目までにAKIを発症(Acute Kidney Injury Network(AKIN)基準による定義)する被験者の割合であり、QPI-1002による治療がAKIの発生率を有意に低下させたことから達成されました。

全試験集団で観察されたQPI-1002治療効果は、慢性腎臓病(CKD)、糖尿病、および複数の心臓血管外科手術を受けた高リスク患者を含む被験者の所定のサブグループにおいても一貫しており、国際的に統一された診断基準RIFLE(Risk・Injury・Failure・Loss(腎機能の喪失)・End-stage kidney disease)によって定義されたAKIに対しても、統計学的に有意な治療効果が示されました。

この試験においては、QPI-1002の良好な忍容性が示されました。 QPI-1002はプラセボと比較して同等の有害事象発生率を示し、両方の治療群で最も一般的な事象は、胸水、呼吸器および感染性合併症を含む、心血管手術後に典型的に見られるものでした。

これらの試験結果は、現在承認された治療法が存在しない、リスクのある患者の心臓手術に関連するAKIの予防および改善のための医薬品としてのQPI-1002の、継続的な開発を支持するものです。クォーク社は、何百人もの患者を対象としたQRK-209試験が、AKIの減少のプライマリーエンドポイントが達成された初めての十分に管理された臨床試験であると考えています。この研究のデータは今後、学会で発表される予定です。

クォーク社の米国拠点のトップであり最高マーケティング責任者(CMO)のシャイ・アーリッヒ医師は、「クォーク社は、虚血再灌流腎障害に関連する様々な適応症においてQPI-1002を開発しています。我々はQRK-209の試験結果に満足しています。なぜならば、今回の試験結果が、以前に無作為化・二重盲検・プラセボ対照・多施設共同のフェーズⅡ臨床試験(開発番号:QRK-006b、臨床試験番号:NCT00802347)で報告された、QPI-1002が腎臓移植後臓器機能障害(DGF)の発生率および重症度を低下させるという肯定的な効果を裏付けるものだからです。これらの2つの研究結果は、クォーク社の垂直統合型Discovery-to-Developmentプラットフォームの有効性を立証し、siRNA治療分野におけるクォーク社のリーダーとしての地位を示すものです。QPI-1002は現在、DGFの発生率と重症度の低減についてフェーズⅢ臨床試験(開発番号:QRK-306、臨床試験番号:NCT02610296)で評価中です。」と述べました。

インディアナ大学医学部、医学・細胞・統合生理学教室主幹教授(Distinguished Professor)を務め、米国腎臓学会の元会長でもあるブルース・A・モリトリス医学博士は「AKIは、心臓手術後の主要な合併症の1つであり、入院の増加、慢性腎臓病の発症および術後死亡率の上昇に関連しています。現在、AKIの予防のための承認された治療はありません。クォーク社によるQRK-209試験の結果は有望であり、患者ケアにおける重要な進歩である、AKI発生率を低下させる治療法への一歩前進です。」との見解を述べています。

【急性腎不全(AKI)について】
AKIは、入院中の患者の約5%および集中治療室に入院した患者の30%において問題になる、深刻な臨床症状です。主要な心臓血管手術を受けている患者では、手術中の腎臓への局所血流の減少および血流の回復後のいわゆる再灌流傷害によって引き起こされる虚血状態の結果として、術後AKIが数時間から数日以内に発症します。心臓血管手術を受けているほとんどの患者のAKI発症率は低いものの、高リスク患者では(AKIの定義に応じて)22〜39%と高くなる可能性があります。手術後のAKI発症後30日の死亡率は50%を超えます。心臓手術後に透析が必要な患者の予後は不良であり、増えている死亡リスクは60%を超えていますが、心臓手術後の正常な腎機能を有する患者と比較して、透析を必要としないAKIを発症する患者においては短期および長期での死亡リスクは4倍に増加します。AKIは特定の治療法がないアンメットメディカルニーズの1つです。

【QPI-1002について】
QPI-1002は初めてヒト臨床試験に供された全身投与型siRNA医薬品であり、何百人もの患者に対して行われた、適切にコントロールされた複数の臨床試験を経てきました。これは治験用の医薬品であり、プロアポトーシス遺伝子p53の発現を一時的に阻害して、正常細胞を急性組織傷害に起因する細胞死から保護するように設計されています。前臨床試験ではp53を標的としたsiRNAが、臨床を適切に反映した様々な動物モデルにおいて、虚血再灌流傷害から腎臓を保護し得ることが示されています。QPI-1002は腎臓移植後の遅延移植機能の予防薬として、米国および欧州でオーファンドラッグの指定を受けています。2010年8月の契約に基づき、ノバルティスはQPI-1002の開発と製品化のための独占的な世界的ライセンスオプションを保有しています。

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以上