2017年2月28日
SBIファーマ株式会社

 SBIホールディングス株式会社の子会社で5-アミノレブリン酸(ALA)(※1)を利用した医薬品、健康食品及び化粧品の研究・開発等を行っているSBIファーマ株式会社(所在地:東京都港区、代表取締役執行役員社長:北尾 吉孝、以下「SBIファーマ」)は、同社役職員が国立大学法人東京工業大学(所在地:東京都目黒区、学長:三島 良直)生命理工学院 湯浅英哉教授及び小倉俊一郎准教授と共に、ALAとランタニドナノ粒子(※2)を利用した赤外域光による光線力学的治療(Photodynamic Therapy: PDT)(※3)に対して、平成28年度手島精一記念研究賞「発明賞」を受賞しましたので、お知らせいたします。

1. 受賞者:
湯浅 英哉国立大学法人東京工業大学 生命理工学院 教授
小倉 俊一郎国立大学法人東京工業大学 生命理工学院 准教授
田中 徹SBIファーマ株式会社 代表取締役執行役員副社長
井上 克司SBIファーマ株式会社 製造事業本部担当部長
高橋 究SBIファーマ株式会社 研究開発本部副部長
2. 受賞テーマ:赤外域光による光線力学的治療又は診断剤の発明
3. 受賞内容:
ALA投与により、がんに選択的に蓄積するプロトポルフィリンⅨ(PPIX)が集積します。PPIXは光増感作用を持つため、光照射により生成される活性酸素(※4)を生じ、その殺細胞性によりがんの治療が可能となります。ALA-PDTと称されるこの治療法は、外科手術等の治療法と比較して、侵襲性が低く、臓器温存が可能であることから、新たながん治療法として注目されていますが、光が到達できる組織表層までしか適用できないという制限がありました。

 受賞した発明は、生体組織深部まで到達できる近赤外光(赤外域光の一種)をより高エネルギーの可視光にアップコンバージョン(※5)できるランタニドナノ粒子とALAを組み合わせて使用することで、生体組織深部に到達した近赤外光をより高エネルギー光に変換してがん治療に利用する技術で、これまで困難であった深部がんの治療が期待されています。

 なお、手島精一記念研究賞とは、東京工業大学の前身である東京工業学校及び東京高等学校の校長であった手島精一先生が退官した際に、先生の功績を記念するため、当時の政界、財界及び教育界の多数の諸名士の賛同を得て、理工系大学における研究を奨励するために創設されたもので、本賞には、研究論文賞、博士論文賞、留学生研究賞、発明賞、若手研究賞(藤野・中村賞)、著述賞があります。

 SBIファーマはアンメットメディカルニーズに応える医薬品を世界中の一人でも多くの方に提供できるよう、今後もALAの様々な可能性を追求し、医薬品等の研究開発に努めてまいります。

(※1) 5-アミノレブリン酸(ALA)とは:体内のミトコンドリアで作られるアミノ酸。ヘムやシトクロムと呼ばれるエネルギー生産に関与する機能分子の原料となる重要なアミノ酸ですが、加齢に伴い生産性が低下することが知られています。ALAは、焼酎粕や赤ワイン、高麗人参等の食品にも含まれるほか、植物の葉緑体原料としても知られています。また、がん細胞においてのみポルフィリンに代謝される性質が利用されて、脳腫瘍の術中診断薬としても承認されています。
(※2) ランタニドナノ粒子とは:イッテルビウム、エルビウムなど、原子番号57~71の複数のランタニドイオンを含む平均粒子径50~200nmの粒子のことで、近赤外光を吸収し、可視光を放出します。
(※3) 光線力学的治療(Photodynamic Therapy: PDT)とは:光増感剤を投与して患部に集積させ、光励起により生成される活性酸素や各種ラジカルなどの殺細胞性を利用した治療法で、がん治療法においては、外科手術等の一般的治療法より侵襲性が低く、治療痕が残りにくいため、次世代の治療法として近年注目を集めています。
(※4) 活性酸素とは:大気中に含まれる酸素に比べて化学反応を起こしやすい酸素の化合物の総称で、一重項酸素、スーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシルラジカルが知られています。
(※5) アップコンバージョンとは:近赤外光等の長波長の励起光を、より短波長の青色可視光に変換して発光することで、低エネルギー光を高エネルギー光に変換することからアップコンバージョンと称されています。

以上