2018年1月25日
SBIファーマ株式会社
国立大学法人山形大学医学部
SBIホールディングス株式会社の子会社でALA(5-Aminolevulinic Acid:5-アミノレブリン酸)(※1)を利用した医薬品の研究・開発等を行っているSBIファーマ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役執行役員社長:北尾 吉孝)と共同研究を進めている国立大学法人山形大学医学部(所在地:山形県山形市、医学部長:山下英俊)は、山形大学医学部メディカルサイエンス推進研究所(所在地:山形県山形市、運営委員会委員長:嘉山孝正)遺伝子実験センターの中島修教授らによる「高齢のマウスにおいて、5-アミノレブリン酸の産生不足は、ミトコンドリア機能の減弱と共に、耐糖能を損ない、インシュリン抵抗性になる」という表題の研究が、米国科学誌“PLOS ONE”に掲載されましたので、以下の通りお知らせいたします。
掲載誌 | PLOS ONE |
表題 | 5-Aminolevulinic acid (ALA) deficiency causes impaired glucose tolerance and insulin resistance coincident with an attenuation of mitochondrial function in aged mice |
掲載URL | http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0189593 |
要旨 | 脊椎動物においてヘム生合成の第一段階は、ALA合成酵素(ALAS)による5-アミノレブリン酸(ALA)の生成である。ALAの合成は、細胞内のヘム生成の律速と考えられている。最近のいくつかの群間比較研究では、ALAが前糖尿病段階の人や2型糖尿病患者の治療に使える可能性が示唆されている。これらの研究は、ALAまたはヘムが糖代謝を制御するメカニズムが存在することを示唆している。ALASにはアイソザイムが存在するが、ALAS1遺伝子は体内のあらゆる組織に発現する。ALAS1の発現を減じたヘテロ接合体(A1+/-s)マウスでは、20週齢(高齢A1+/-s)を超えると、耐糖能の低下(IGT)とインシュリン抵抗性(IR)が生じる。このIGTおよびIRは、高齢A1+/-sマウスにおいてALAを1週間経口投与することで回復できた。しかし、ALAの明らかな効果は可逆的であり、ALAの投与中断により失われた。高齢A1+/-sマウスの衰えた筋肉においては、IGTおよびIRと共にミトコンドリア機能の脆弱化が観察された。1週間のALAの経口投与は、ミトコンドリア活性の部分的な改善しかもたらさなかったが、6週間のALA治療では、ミトコンドリア機能を十分に救済した。分化させたC2C12筋芽細胞を用いた研究においては、糖代謝の障害は細胞に自律的に起こる現象で、ALA生合成の不足は最終的にヘムの枯渇につながる。この一連の現象は、C2C12細胞でALAS1遺伝子を欠損させたり、あるいはスクシニルアセトンによりヘムの生合成を阻害することにより、糖取り込みが低下することで証明された。我々のデータは、ALA不足はミトコンドリア機能を弱め、加齢に応じてIGTおよびIRを引き起こすということを、生体において証明している。これらのデータは、IGT/IRの病因に関連してヘムと糖に予期せぬ代謝のリンクがあることを明らかにした。 |
本研究により、高齢マウスにおいてはALAの産生の低下が、ミトコンドリアの機能を弱くすると共に、IGTおよびIRを引き起こす原因の1つであり、ALAの継続的な投与はIGTおよびIRに対して一定の効果を発揮することが明らかになりました。今後、ヒトにおけるALA欠乏時のメカニズムが解明され、2型糖尿病などに対するALAの効果のメカニズムの解明に繋がることが期待されます。
(※1)5-アミノレブリン酸(ALA)とは:体内のミトコンドリアで作られるアミノ酸。ヘムやシトクロムと呼ばれるエネルギー生産に関与する機能分子の原料となる重要な物質ですが、加齢に伴い生産性が低下することが知られています。ALAは、焼酎粕や赤ワイン、高麗人参等の食品にも含まれるほか、植物の葉緑体原料としても知られています。
(※2)C2C12細胞とは:マウスの横紋筋由来の筋芽細胞で,in vitroにおける骨格筋分化実験に使用されています。近年では,糖尿病における骨格筋の変性は,Type II線維に偏るなど,糖負荷による様々な骨格筋の退行変性を示す論文が報告されていますが、in vitroではC2C12筋芽細胞を用いて、増殖と分化に着目した研究が行われており、培養環境中のglucose濃度やinsulin濃度の差異が与える影響などが研究されています。
以上